第51回 夢の劇場

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「やっぱり・・・。」

小手先のマイナス金利政策で、
銀行株は収益悪化を懸念したマーケットの反応により急落し、
数日後には、FRBの利上げに疑いを深めた金融市場の影響でドル安円高に。
当然、日経平均は安値推移するのですが、これは多くの人の想定内だったでしょう。
週末の米国雇用統計の影響で多少ドルが持ち直しており、
日経平均もまた上昇していく可能性もありますが、
相場は相場が決めるわけなので、いずれにしても本質は何も変わっていないのです。

不安定な市場と新興国の弱い成長というよく目にする二つのキーワードは、
景気対策不調の言い訳に使われているだけで、誰しもが想定していた事象です。
先進国といわれる国々もそれなりの歴史を経て、先進国になっているわけで、
いくら情報や物流が早くなっても、そのスピードに人々が確実に着いてきて、
新興国が倍速で成長できることなど、ないのです。

The Theatre of Dreamsと呼ばれるOld Traffordは、
終戦後1941年に再建された、マンチェスター・ユナイテッドのホームスタジアム。
歴史を感じさせるその佇まいは、単に名勝負が演じられたことを主張するだけでなく、
積上げられたレンガひとつひとつが、歴史の積み重ねを感じさてくれます。
「早すぎる成長、一足飛びの成長は、ない。」と教えてくれるのです。

そうです。
奇跡的に、岡崎慎司選手の出場するプレミア首位対決を観ることになった僕は、
Manchesterの曇った空の下、試合会場ではないOld Traffordにいます。
隣接するHotel Footballに宿泊し、試合前日、夢の劇場を見学しに来たのです。

お世辞にも近代的とは言えないスタジアムの設備、
選手には狭いのでは、と思ってしまうロッカールームやシャワールーム、
なんとなく洗練されていない陳列のミュージアム・・・。
「世界最高峰なのかな?」

コーナーキック蹴れるのかなと疑うほどの接近したスタンド、
24時間体制でピッチを管理する優しい目のグランドキーパー、
マッチデーでもないのに、10分おきにツアーに訪れるファンの人々・・・。
「世界最高峰だ!!」

本質を熟知した人々によって折り重ねられた歴史の表現者に固唾をのみました。

ミュージアムに陳列された歴代選手のユニフォームの胸には、話題の「SHARP」。
黄金期ともいわれる1982年から2000年までスポンサードした我が国の優良企業は、
いま、まな板の鯉状態で、各部署で購買していた新聞類も打ち切られているとのこと。

買収の優先交渉権を得て協議をすすめる、鴻海精密工業のテリーゴウ氏は、
「若いスタッフ、特にエンジニア、ワーカーが素晴らしい。
 赤字の元凶は液晶ではなくソーラーパネル。
 昔のように『技術で世界ナンバーワン』を取り戻したい。」
と、本質を見極めたうえで、熱い志を語っています。

SHARPの得意とする注目の液晶パネル技術の『IGZO(イグゾー)』は、
スマホでの採用が進む有機ELパネルとの相性が良いと言われ、
数々の特許を握っているそうです。

その優れた技術を隣国企業に流失させてよいのでしょうか。
我が国は液晶技術の将来性をどのようにとらえているのでしょうか。
資金の出し手も含めて、もっともっと本質を見極める作業をし、
リスクテイクする勇気を持ち、全員でリスク共有すべきではないでしょうか。

「モノづくりできない日本」に拍車がかかるかどうか。
SHARP買収問題の雌雄は、我が国の将来を決すると言っても大袈裟でないと
夢の劇場で、僕は考えています。

「がんばれ日本。がんばろう日本人。」
マンチェスター・シティ vs レスター・シティ。
間もなくkick offです。

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